不動産開業で失敗するパターン【3選】

今回は「不動産開業で失敗するパターン3選」についてお話します。
開業後の運営についても言及しますが、考え方としてご参考ください。
その1:資金が確保できていない
不動産業を開業して失敗する一番大きな要因は「資金不足」です。これは特に不動産業に限ったことではないでしょう。
不動産開業にあたり数千万円の準備が必要なことは以前の記事でもお伝えしました。
当該記事には運転資金についても記載していました。開業してから必ずしもすぐに軌道に乗るとは限りません。最低限でも損益分岐点売上高の約半年分は開業前に確保しておきましょう。
損益分岐点売上高を把握するために、毎月の必要経費を試算しておくことが重要です。
必要経費の例としては…
- 人件費
- 広告宣伝費
- 店舗経費
- その他
があげられます。
今回は特に「人件費」と「広告宣伝費」に注目して確認しておきましょう。
人件費

スタッフの給与、またはご自身の給与です。
スタッフの給与については福利厚生を含めて予算を確保しておくことが必要です。
概算として手取り給与に18%程度は最低限想定しておきましょう。ただし、昨今は保険は値上がりしています。値上がりしたとしても対応できるように準備しておきましょう。
また営業スタッフの「歩合」をどのように考えるのかも検討の余地があります。
そもそも「歩合制」にするのか「固定給(+賞与)」にするのかは経営者の考え方次第です。
歩合制のメリットデメリット
それぞれメリットデメリットがありますが、不動産業界では一般的に「歩合制」の場合が多いかと思います。
そして歩合率も様々ですが、売上(仲介手数料 等)の6~10%程度が一般的かと思います。また、会社によっては「最低ライン(カット金額)」を設定しているところもあります。
例えばカット金額が90万円だとして、売上が120万円だとすると「120-90=30万円」に対して歩合率に応じて支給する仕組みです。
また、厳しい会社であれば最低ラインに未達の金額が繰越になる場合もあります。例えば同じく90万円のカット金額であったとして、売上が60万円であれば30万円が繰越となります。当月の歩合が0円であることはもちろんですが、次月は90万円+30万円=120万円が最低ラインとなりますので、それを超える売上をあげないと歩合が支給されない仕組みです。
繰り返しになりますが、どのような歩合制度にするのかは経営者の考え方次第となりますが、当然繰越付きの最低ラインが設定されている場合は営業マンにとってハードになります。従って、その基準に満たない営業マンは辞めていくでしょう。
この現象が良い悪いも考え方次第ですが、営業マンを大量に採用してふるいにかけていく場合に取られる手法です。
採用を常時かけ続けられる資金力があり、営業マンの人数とレベルを一定程度の水準を保ちたい場合に採用される場合があります。ただし、競争が激しい分、場合によっては個人プレーに走る営業マンや中には不正に走ってしまう不届き者も出るかもしれません。諸刃の剣であることは想定しておきましょう。
固定制(+賞与)のメリットデメリット
また、「固定給(+賞与)」の場合にももちろんメリットデメリットがあります。
固定給ですので極論を言えば「頑張っても頑張らなくても給料は変わらない」状態ですので、積極性に欠ける営業組織になってしまう場合があります。もちろん、賞与にて査定に差をつけばカバーできるのかもしれませんが、原則的に賞与は半期ごとが一般的です。期間を短期にすれば歩合と変わらなくなります。賞与までの期間までにモチベーションの維持が出来るかどうかが重要な要素です。
一般的に不動産業界は歩合制の会社が多いことは申し上げた通りです。中途採用で入社する場合は以前の会社が歩合制であった営業マンが固定給(+賞与)になることについて、個別事情や納得感が必要です。
給与制度により、社内風土がどのように醸成されるかも変わってきますので、人件費の項目ですが考慮すべき点です。
自分の給料はどうする?
また、ご自身の給与を「人件費」として取るかどうか?は各個別判断となります。
「給与(役員報酬)」として確保しておくこともできますし、残った利益から実質収入を得るという考え方もあります。それぞれ正解はありませんので、税理士さん等とご相談の上決定してください。
その2:広告宣伝費をケチる

特に開業後すぐ知名度が全くない状態においては危険です。オープンしたことを誰も知らなければ当然お客様も来ません。昨今はSNSによる集客ももてはやされていますが、時間もかかります。当面は副次的な手段と考えた方が良いでしょう。現在の不動産会社の集客方法はポータルサイトへの掲載が主流です。各ポータル会社と開業前に打合せしておき、予算を把握しておきましょう。
また、自社ホームページも場合によっては準備しておきましょう。ポータルサイトに依存度が高まると値上がりなどによりポータルサイト内で競争させられ、広告宣伝費が高騰してしまう可能性があります。知名度が無い場合に、ポータルサイトの知名度やSEOに力を借りることはよいですが、いつまでたってもポータルサイト頼みであれば、大きなリスクを抱えておくことにもなります。
また、自社ホームページというと物件サイトを思い浮かべるかもしれませんが、物件サイトは主に買主様用のホームページです。もちろん、売主様向けのページもありますが主役は買主様ですので、別ページにてランディングページを併用することも増えてきています。
買主様と売主様では顧客層が違います。同じ対策をしても効果が上がらない場合がありますので、オープン当初からしっかり売主様からの依頼を受けて「両手仲介」を狙いたい場合は対策しておきましょう。
尚、広告宣伝費全体の目安は売上対比最低限10~15%前後は想定しておきましょう。(オープン当初は多め)
広告宣伝費は変動費ですので、削減したがる経営者の方もいらっしゃいますが不動産仲介業はフロー型のビジネスですので集客しつづけなければ売上はあがりません。
もちろん、無駄な経費は不要ですがしっかり固定費化して予算を取っておきましょう。ROI(※1)やROAS(※2)など広告の効果測定をしっかり行うことも大切です。予算内で成果が上がるように、しっかり運用していきましょう。
(※1) ROI…Return On Investment の略で、「投資利益率」
(※2) ROAS(Return On Advertising Spend)とは、広告費に対してどれだけ広告経由で売り上げがあったか成果を計る指標。投資した「広告費用の回収率」
その3:採用活動をしない(仕組化しない)

最後は「採用活動をしない(仕組み化しない)」ということについてです。言い換えると「何でも自分でやってしまう」ということです。
開業当初は一人でスタートするかもしれません。ただし、どこまでの規模で活動するかにもよりますがずっと一人で活動すると頭打ちになる事があります。売上規模を伸ばし、会社を成長させていきたいのであればスタッフを増やすことも考えましょう。
一人で出来る範囲で良いという考え方もありますが、それであったとしても「仕組み化」を考えておくに越したことはありません。外注スタッフも含めて「営業できる時間」を確保しましょう。
これも繰り返しになりますが、不動産仲介業はフロービジネスです。毎月〆たらリセットです。従って「稼ぎ続けなければならない」事業です。兼業で賃貸管理なども事業展開してストック型の収入(管理料収入)があるのであれば、まだよいかもしれません。ただし、上記のように広告宣伝費が毎月出費していくことが前提となる中で、例えば契約が重なった場合書類作成にも時間がかかります。
また、急な事故や病気などもあり得なくはありません。その間、営業活動がストップしてしまったら広告宣伝費のロスや売上に波がでてしまい経営的にリスクが増大します。
ITについて詳しかったり、抵抗感がないのであれば「不動産テック」の活用も良いでしょう。
ただし小規模事業者にもかかわらず機能がありすぎて使わないこともよくあります。
当然ながら「営業活動量」に比例して売上は伸びるものですので、「営業活動時間」を確保できるような仕組みを採用やITで構築しておきましょう。
まとめ
「不動産開業で失敗するパターン3選」を見てきました。
もちろん、他にも失敗してしまう要因はあるでしょう。しかし、根本的には「計画的な事業運営」が出来ているかどうか?が大切です。
資金、広告宣伝費などの予算は多くかかる想定で、売上予測はシビアに考えておきましょう。
そして、売上を伸ばすためには仕組み化も重要です。
考え方の一例ですが、ご参考ください。