不動産開業するのに資格は必要か?

結論は「なくてもよい」が…
こんにちは。今回は「不動産開業をするのに資格は必要か?」ということについてお話していきます。
タイトルの通り、必要かどうかと言われれば「必要」ではありません。ただし、本人が資格保持者でなくてもよいという意味です。
では、まず宅建業を開業する際の要件を確認しておきましょう。
不動産開業要件
不動産開業の申請をするためには3つのステップが必要です。
① 事務所の設置
開業申請を行うに際して業務を行う場所を準備しなければなりません。
詳しくは別記事をご参考ください。
② 宅地建物取引士の設置
宅建業法では営業を行う事務所などの拠点ごとに、一定数以上の専任の宅建士(正式名称:宅地建物取引士)の設置を義務づけています。
一定以上とは「5名に1名の割合以上」となります。
つまり、ご自身を含めて6人目のスタッフが入社することになったら2人目の宅建士が必要となります。また、「拠点ごとに」となりますので2店舗目を開設する際には1店舗目と違う宅建士の確保が必要となります。
つまり、5人に1人の割合で宅建士が在籍していれば良いわけですので必ずしもご自身である必要はありません。
③ 宅建業免許の申請
②のステップで選定した「専任の宅建士」の宅建士免許でもって宅建「業」の申請をします。
以上により、必ずしも宅建業免許申請に際して代表者自身が宅建士免許を保有している必要性はありませんが、取得可能であればもちろん取得しておいた方がいいかと思います。
その理由を考察していきましょう。
自分自身でも宅建士を取っておいた方が良い理由
退職リスク
宅建士をご自身でも取得しておいた方が良い理由の一つ目は「退職リスク」です。
宅建士には「重要事項説明」というお客様にとってリスクや契約内容を詳細に説明する大切な役割があります。そのため、その説明を行うべき宅建士がいなければ業務を行うことがとても困難になります。
宅建業法では、専任の宅地建物取引士の数が足りなった場合は、2週間以内に「適合させるため必要な措置を執らなければならない」とされています。つまり、宅建士が退職してしまったら2週間以内に補充しなければならないということです。
万一「不適合状態」が続いたまま業務を続けていた場合、免許の更新ができないだけでなく行政指導や行政処分の対象となる可能性があります。もし、監督処分が行われてしまうと処分内容は公開されてしまいます。
また「どうしてもいなかったら『名義貸し』ではダメなのか?」と聞かれることもありますが、ダメです。
『名義貸し』は完全に違法です。
宅建業法の第12条です。
「何人も、宅地建物取引業免許を受けないで、宅地建物取引業を営んではならず、また宅建業を営む旨の表示をし、又は宅地建物取引業を営む目的をもって広告をしてはならない。」
とあります。
そして、「「3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または両者の併科)」という罰則になります。
絶対にやめておきましょう。
このような「宅建士の退職リスク」に備えるためにもご自身でお早めに取得されておくことをオススメします。
業務把握
宅建士の資格を取得しておくメリットの2つ目は「業務を把握できる」ということです。
ご自身で独立開業される場合と、新規事業として開業してご自身は本業メイン・不動産業は店長を採用して運営を任せる場合の2パターンがあると思いますが、いずれにせよ不動産業の業務内容の把握をしておいた方が良いのはもちろんです。
宅建士の資格試験は正直「これは現場では違うよ…」(=机上の空論)という内容が無いわけではありません。(他の資格試験にもあり得ることでしょう)
宅建士の試験は大きく「民法」「宅建業法」「建築基準法等」「その他」と分かれており、「宅建業法」がメインとなります。
この宅建業法で上記の開業要件や違反した場合の罰則など、不動産取引に関わるルールを勉強することになります。つまり、多少現場の運用との差異があったにしても不動産業を運営する際のルールブックを勉強するわけですので、業務を把握するうえで大いに役に立つでしょう。
また、民法に触れたことが無い人には「法律的な考え方」を勉強するのにも大いに役に立ちます。
不動産業に関わらず、トラブルは日常で起こる可能性は大いにありますが、その際の法律的解釈の素養を身に着けておくことでトラブル予防や解決に役に立つことでしょう。
もちろん、「業務マニュアル」ではありませんので業務の流れなどが記載されているわけではありません(法律の勉強です。例えば、営業方法などは当然かかれていません)が、全体像を把握しておくことはとても重要です。
マネジメント
3つ目のメリットは「マネジメントに活かす」です。
不動産業は現実的には経験者が幅を利かせていることがまだまだ多い業界です。
従って、不動産業の経験が長いだけで経営者に対して不遜な態度を取る人間もゼロではありません。特に不動産業の経験がないオーナー=社長に対して「何もわかっていない」というスタンスを取るスタッフも中にはいるかもしれません。
そこで、宅建士の資格を取得しておくだけで抑止効果になるかはそれだけでは不明ですが少なくとも全く不案内というわけではなくなりますので、経験者スタッフとの共通用語や認識を持つことができ、スムーズなコミュニケーションにつながる可能性は大いにあるでしょう。
その意味合いでも、取得しておくことをオススメします。
宅建士を取るためには

では、宅建士を取得するためにはどのような方法があるでしょうか?
まずは、勉強方法についてです。
勉強方法
まずは、勉強時間の目安は200~300時間程度と言われています。
ただし、そもそもの法律知識や不動産業経験によって状況が変わってくるのは当然です。初めて宅建を勉強する人は、平均500時間ほど勉強しているとの説もあります。少なくとも200時間以上は確保した方が良いでしょう。
その上で、どのように勉強するか?は大きく以下の2つのパターンが考えられます。
独学
まずは独学です。
宅建の試験自体は上記の通り約200~300時間が目安です。他の法律系資格(司法書士、弁護士等)や他の国家資格と比べても難易度がむちゃくちゃ高いわけではありません。
そこで、スクールに通う費用がもったいないので独学で合格してしまおうという人も多くいますし、実際に合格している方も多数います。最近はYouTube等の動画でも無料で有益な情報が得られることも多いでしょう。
ただし、気をつけておくことは「ペースメーカー」の存在です。
「ライザップ」が有名ですよね。ライザップで提供しているサービスそのものはそれほど珍しいものではないかもしれません。しかし、担当トレーナーが受講者と一緒になって叱咤激励し目標に向かってペースメイキングをしてくれるので結果的にダイエット成功者もたくさんでたということです。
人間誘惑には弱いものです。鉄の意志で受験を決意したとしてもそれを数カ月維持するのはとても大変です。その場合は、スクールの利用も検討しましょう。
スクール
宅建の資格講座はたくさんの資格スクールが開講しています。
スクールに通う大きなメリットは「強制力」と「お金の大切さ」がわかることです。
スクールには様々なパターンがありますが、まず「強制力」が大きなメリットです。「自分のペースで自習室で勉強できます」というコースもありますが、個人的にはそれではわざわざ高額なスクールに通う意味がありません。「自分のペースで動画で学習」なら、現在はたくさんの選択肢があります。「定期的に通わざるといけない環境」に身をおくことがとても重要です。
ペースメイキングは学校側がしてくれるので、後はそれに乗っかって勉強に集中するだけです。
また、金銭的な対価に対して「無駄にしたくない」という発想も生まれるのでこれをモチベーションにすることにもなります。
「意思が弱い」という自信のある方!?は、環境を変えた方が解決は早いです。
まとめ
不動産業を開業する際に、資格=宅建士資格自体は必ずしも必要ではありません。
ただし、取得しておかないことでリスクも生じますので時間があるうちに早期に取得しておきましょう(宅建士の試験は原則年1回です)