不動産開業の資金調達はどのようにするのか?

前回の記事のように、不動産を開業するには数千万円単位の資金調達が必要です。

設備投資ばかりに目が行きがちですが、本当に大切なことは「運転資金」を数カ月~半年間程度最低でも確保できているのか?ということになります。運転資金がしっかり確保できていないと、開業後すぐに売上をあげつづけなければ途端に資金ショートとなってしまいます。開業後すぐに順調に売上を伸ばすことができたらよいかもしれませんが、特に未経験から独立や新規事業として新規開業される場合はすぐに売上があがるかどうかはわかりません。月額経費を超える売上を上げないと赤字が累積していきます。準備計画段階で、運転資金まで含めてしっかり資金調達をしておきましょう。

さて、ここでは不動産業を開業するにあたり資金調達する3つの方法とそのポイントについてお話していきます。

融資(お金を借りる)

新規事業を行う場合、基本的には貯金からだすorお金を借りるという形が多いかと思います。

不動産事業は繰り返しになりますが、数千万単位のお金が必要となります。

自己資金だけでまかなえればベストですが、これだけのお金を貯金することもなかなか大変です…

融資を受ける場合は「自己資金」がいくらあるか?も重要なので、いずれにしても貯金をすることは大切ですが、ここではまず代表的な融資の方法をそれぞれ見ていきましょう。

銀行

創業時に受ける融資の方法として次項の「政策金融公庫」から調達するということもありますが、昨今はいずれにしても「協調融資」と言って公庫と銀行の共同での貸し出しのパターンも多いですので銀行から見ていきます。

まず、銀行には大きく「都市銀行」「地方銀行」「信用金庫」「その他(JAなど)」に分類することができます。

都市銀行はいわゆるメガバンクと言っても良いでしょう。ただし、実際に新規を申し込むのは現実的ではありません。地方銀行もさほど状況は変わりません。

新規開業する場合に、最も頼りになるが「信用金庫」です。

「信用金庫」は「中小企業支援」が大きなミッションの一つであり、その支援策の一つとして新規事業融資を積極的に行っている金融機関は多くなっています。

例えば、京都信用金庫の「ここからはじまる」という商品があります。

この商品は約16ヶ月~約28ヶ月まで当座借越ができます。当座貸越とは、口座残高が不足した場合に自動的に借入できる仕組みのことです。「ここからはじまる」は当初は毎月の返済なしで、必要なときに必要な資金を利用することが可能です。(※詳細は直接ご確認ください)

また、「中小企業支援」というミッションを達成するために親身になってくれるパートナーとしても頼りになりそうです。

さらに開業後も住宅ローン審査を依頼する際も頼りになる存在です。

住宅ローン審査も一般的には都市銀行>地方銀行>信用金庫の順に難易度が高くなります。開業後のお付き合いも含めてお世話になっておきましょう。

国金

日本政策金融公庫のことです。

こちらは「半官半民」の金融機関です。正確に言うと違うのかもしれませんが、イメージとしてはミッションとして公的な部分を含んでいる印象です。

こちらは、自己資金要件が特に言われる印象です。

自己資金に対して3~9倍の金額の融資が可能となっていますが、現実的に9倍まで調達できることは少ないようです。実際の印象では3倍程度まで、それも1000万以下の場合が大半です。1000万までは支店決裁でそれ以上は本店決裁となるので、時間もかかります。そして、最高は2000万までとなります。

少額を借りてきっちり返済し「信用力」をつけていくことで、調達難易度も下がりそうです。

尚、日本政策金融公庫には「新創業融資」という枠もあり融資条件も一般融資と異なるパターンもあります。ただし、新創業融資だから必ずしも借りやすいという訳ではありません。

諸条件を比較検討、相談して方針を決めていきましょう。

不動産担保融資

こちらは上記の融資方法に比べれば金利等が高い場合が大半であり、新規事業をする場合に必ずしもオススメの方法とは言えないのですが、「担保」という形で銀行の考え方を理解するためにもここで説明しておきます。

「不動産担保融資」とはその名の通り、「不動産」を「担保」として利用する融資方法です。

従って、担保として提供できる不動産を保有していなければそもそも利用することができません。

ここで「担保」と「信用力」の考え方についてお伝えしておきます。

まず、銀行の立場になってみましょう。

銀行は「金融業」です。つまり「お金」を「融通」する業務です。お金を貸すからには当然返してもらわなければなりません。そうすると、どのような人に貸した方が「未収=返ってこないお金」が減るでしょうか?

簡単なことです。「お金を返してくれそうな人」=「信用力が高い人」ですよね。

しかし、新規事業を行うわけですからその新規事業が上手くいくかどうかはわかりません。つまり、非常にギャンブル性の高い貸し方となるわけです。

そこで、その「信用力」を補うために「担保」を提供する場合があります

上記新規事業向けの融資商品は無担保でも可能なものもありますが、逆に不動産を担保として提供することで通常以外の調達も考えられることになります。

ただし、不動産も担保評価をするのは金融機関側ですからどれくらいの評価をするか、また不動産には変動リスクがあるのでそれをどのように評価するかは先方次第です。

とは言え、選択肢は広い方が良いかと思いますのでここで参考として挙げておきます。

ノンバンク

こちらも選択としてはリスクが高いかもしれませんが、参考までにお伝えしておきます。

いわゆる「フリーローン」という融資方法です。

当然ながら金利は高くなり、融資金額も制限があります。

しかし、上記の不動産担保ローンも含めて高金利なものも利用方法として初期にどうしても調達が必要な場合に少額利用し(少し足りない場合など)、内部留保ができてきた段階で借り換え等を検討していくこともできます。

それぞれのメリットデメリットを考慮しながら、検討していきましょう。

知人・友人・親族

こちらも現実的な手段ですが、当然ながら今までの人間関係において信用を得ていることが大切です。

ポイントは「口約束」にせずにしっかり「借用書」を作成することです。何事もトラブルの一番の原因となるのは「言った言わない」が多いかと思います。「借用書」をわざわざ作成することで相手に真剣さが伝わることもあるかもしれません。

人間関係が大きくものを言いますが、手段の一つとして考慮しておきましょう。

自己資金(貯める)

自己資金の重要性

融資を受けるにあたって重要なことはたくさんありますが、その一つに「自己資金」の金額があります。

金融機関から見れば当然貸出リスクを減らすためという事もありますが、その他の側面としては「経営者の資質の判断要素」としても見られます

要は「自己資金をコツコツ貯めるというような【継続的】【計画的】な行動が出来る人物か」という判断指標のひとつです。経営をしていくうえで、「一発当てる」ことも大切ですが「一発屋」で終わることはよろしくありません。事業運営していくうえで「継続」することはとても大切です。そして、そのために計画的な行動をしているかどうかも経営者の資質の一つです。

ですので、例えば自己資金の金額が重要だからと言って申請の直前に多額の金額がポンと入金されていたとしてもあまり評価されません。極論を言えば、【審査対策用】に一時的に知人から借りておくことも可能だからです。それでは、実態とかけ離れていますよね。

従って、不動産開業特に独立して開業される場合は数年前からコツコツと貯蓄をしておくことがとても大切です。

頑張って日頃から貯金をしておきましょう。

■ その他(投資をうける・クラウドファンディング)

資金調達の方法は上記以外にもたくさんあり、さらに選択肢も増えてきています。

ここでは「その他」として「投資をうける」「クラウドファンディング」を紹介しておきます。

この二つに共通することは「他人からお金を出してもらう」ということです。「返済義務ありなし」など条件等は状況によって変わりますが、とにかく言えることは「あなたの事業に期待して、そのリターンを求めている」ということです。見返りとしてはもちろん金銭的な価値や、単純に応援したいという気持ちもあるでしょう。

つまり事業そのものやあなたに際立った魅力があることが必要です。この方法を利用する場合は特にプレゼンが上手い人はやってみる価値はあるかもしれません。

まとめ

資金調達といっても方法は様々です。

大きく「借りる」「貯める」「出してもらう」の3つになりますが、いずれも相手側の立場を考慮した立ち回りが必要となります。また、それぞれの方法にメリットデメリットやリスクもあります。

慎重に検討して判断していきましょう。