不動産開業する際の事務所や店舗立地の考え方とは?② 【効果的なテナントの探し方3選】

前回記事では「不動産業を開業する際に理想的な物件とは?」についてお話しました。引き続いて今回は、「効果的なテナントの探し方」について説明いたします。テナントを見つける方法は主に下記の3つのパターンに分かれます。

  1. 不動産会社に探してもらう
  2. インターネットで探す
  3. 直接アタックする

という3パターンが多いかと思います。それぞれにコツと注意点がありますので、お伝えしていきます。

不動産会社に探してもらう

まず一つ目の方法は、「不動産会社に探してもらう」という方法です。

一般的に一番スタンダードな方法かと思います。出店しようとしている地域の不動産屋さんに連絡や訪問をして物件を紹介してもらう方法です。以下がコツと注意点です。

不動産会社には得意分野があることを知る

不動産業と言っても実は色々な形態があります。本記事では売買仲介をメインに事業運営されることを想定していますが、他にも賃貸中心の会社、土地開発が得意な会社、建売業の会社など様々な形態があります。

その中でテナント探しが得意なあるいは専門店は特殊な位置づけです。一般的な仲介店舗に物件情報が全くないわけではありませんが、専門業者より物件はかなり少なくなります。また、テナント専門業者も数多くはありません。そして、これは多少偏見が入るかもしれませんが、多くのテナント中心の業者は「待ち」のスタイルの業者さんが多いような印象があります。確かに居住用の物件のように数多くの物件情報が毎週のように出てくるわけではありませんので仕方がない側面はあります。

そこで、開業時期を伝えて毎週1回月曜日に連絡するなどして積極的に契約意思があることを印象付けるとよいでしょう。そうすると、今すぐ物件がなかったとしても他にあたってくれる可能性もあります。

不動産会社はライバルでもあることを知る

不動産業者に不動産業を開業するために連絡することになるので、相手によっては嫌がられる場合も実際はあります。「そんなこと言っても、今回は客じゃないか」と思われるかもしれません。しかし、相手も人間ですので直接断られなかったとしても積極的な姿勢でなくなる可能性はあります。そこは仕方がないと割り切って対策を考えましょう。

物件を探す際に何業で開業予定なのかはほぼ確実に聞かれます。オーナー様によっては断られる業態もあります(特に飲食)。ウソをついても開業後にバレますので、不動産関連の事業をすることは隠さずに伝えましょう。

ただし、ハッキリ伝える必要もないので「不動産やリフォームなど」ぐらいのニュアンスでウソが無い程度に回答しておきましょう。飲食が断られる事もあるのは、主に匂いが物件についてしまうことなどを嫌がるオーナー様も中にはいらっしゃるからです。不動産やリフォームの事務所・店舗でそのようなことは無いかと思いますので、オーナー様の懸念点から外れていれば問題ないでしょう。

いずれにせよ開業後にも情報交換が出来るように担当してくれた不動産会社と仲良くなっておくにこしたことはありません。最初は警戒されるかもしれませんが、頑張って仲良くなりましょう。

インターネットで探す

ポータルサイト

2つ目は、「インターネットで探す」になります。

「○○市 テナント」などで検索すると良いでしょう。その中でも個人的にはポータルサイト(※)の「at home」がテナント情報が比較的多い印象です。

不動産情報サイト アットホーム>貸し店舗・空き店舗の物件情報を探す

「at home」はポータルサイトのなかでも歴史が古く、そのため余りインターネット掲載に積極的ではないような地元で業歴の長いベテラン店舗でも「at home」には少し掲載していることも多いです。

「at home」で見ても内見の際は結局担当の不動産業者さんに案内してもらう事にはなりますが、インターネットで先に情報を見ておくことで内見前に下見をしておくことも可能でしょう。そこで、前回お話したような条件に近いかどうか、また条件の優先順位などを確認しておきましょう。

※ポータルサイト…元々は「玄関口」という意味です。各社の物件情報が集合しているモールショップのようなイメージです。

直接アタックする

最後は「直接アタックする」となります。誰にアタックするかというと「地主さん」です。いわゆる「地上げ」に近いようなイメージです。「地上げ」というと悪いイメージがあるかもしれませんが、単純に地主さんや空き家、空きテナントになっている物件に直接アプローチするだけです。

物件情報を得るためには、まず出店候補エリアを車でぐるぐる回ります。道の一本一本全てくまなくあたります。それによって、土地勘もつきますし車の出入りにし易さの体感など開業後の参考になる副産物も得ることができます。

実際「店舗になりそうな物件はないかな?」という視点でエリアを歩いたり、車で走ったりすると不思議なもので今まで関係なさそうに見えていた家や物件が「店舗候補物件」に見えてきます。

「インターネットには掲載されていなかったがシャッターがしまっているテナント」「1階がシャッターになっている住居」「利用されていない倉庫」など、何も考えずに歩いていればスルーしていた物件が「店舗候補地」に見えてきませんか(笑)。

候補が見つかれば法務局にて登記簿謄本を取得(※インターネットサービスもあります。登録が必要ですが、開業後にいずれにしても利用します)所有者に直接連絡します。連絡先が一度でわからないかもしれませんが、104で電話を調べる・手紙を出してみる・隣の人に聞いてみる等方法はいくらでもあります

また、物件を「加工」する練習は開業後の営業提案の練習になります。住居から店舗などは用途変更の可能性もありますが、いわゆる物件だけを探していれば選択肢は多くありませんので積極的に探していきましょう。

その他の注意点(資金・保証金、家賃、要件)

資金・保証金

家賃以外にも費用が必要ですので、その分の調達をしておくことが必要です。

例えば、不動産業者への仲介手数料・リフォーム費用・火災保険やその他手続き費用です。

また、一般的に保証金(預り金=オーナーに預けます)は家賃の半年分の場合が多いですのでその分の予算も確保しておきましょう。特にリフォーム費用の場合、スケルトンであれば多額が必要なりますし、原状回復が条件であれば退去時にその予算も必要となります。

家賃

家賃の目安はエリアによっても異なりますが、東京など都心部でなければ原則坪1万円程度が目安となります。坪単価×坪数=家賃となります。

大切なことは、全体的な資金計画から考える事です。

家賃は「固定費」となります。また、オープン準備期間にも営業開始していないにも関わらず費用発生することになります。つまり、経営的な観点から見るとテナント費用に予算を投入しすぎるとがんじがらめになる可能性があります。必ず全体予算の内家賃にかけられる比率はいくらなのか?を計算して、開業当初はなるべく抑えるようにしましょう。

私の知っている会社では、お客さまから見えない事務所スペースについてはクロスを貼っていない会社もあります。大型店へは儲かってから堂々と移転しましょう。

要件

ここでいう要件は2つあります。

一つは建築上の法律や条例です。

地域によって、営業看板の可否やサイズ、色が指定されている場合があります。例えば、京都市は「景観条例」により「白」をベースにした看板でなければなりません。読者の方もよくご存知の有名チェーンも京都市内の店舗看板は一味違います。

事前に自治体の関係部署に確認しておきましょう。

もう一つは、宅建業法上の要件です。

不動産業は「宅建業法(正式名称「宅地建物取引業法(たくちたてものとりひきぎょうほう)」により免許制度が実施され、その事業に対し必要な規制を行なわれています。独立して1店舗目の方にはあまり関係が無いかもしれませんが、もし読者のあなたが既に他の事業を運営されており現業と違う場所に出店を検討している場合はご注意が必要です

不動産業は宅建業法により、「本社所在地と本店が一致していること」が必須条件となります。つまり現業の本社に出店しない限りは、相応の対応が必要となります。対応パターンとしては以下の通りとなります。

1)本業の本社はそのままに別の場所に店舗を構える

2)店舗候補地に本社移転する

3)別会社を作る(=2個めの本社とする)

それぞれメリットデメリットがあります。

1)は店舗スタッフ5人につき1人設置が必要な宅地建物取引士が2人必要となります。

いわゆる宅建士は1店舗につき5名あたり1名必ず必要となります。2店舗兼任はできません。そのため、2か所設置するのであれば2名の採用が必要となります。

また、本業の本社で実際には不動産業を行わなかったとしても本社のままであるならば宅建業への登録が必要となります。かなりのロスですね…

2)はこれを機会に本社ごと移転する形です。ただし、この場合であっても現業を続けられるなら出入り口や店舗スペースを分ける必要はでてきそうです。1)に比べれば身軽かもしれませんが、改装費やそもそもの広さなど検討材料は多くなりそうです。

3)別会社をつくる

実際にはこのパターンが一番多いかと思います。費用的にもこの3つのパターンの中では最も抑えられるからです。また余談的になりますが、新規事業の場合はいずれにせよ銀行から会社を分けるように言われることもあります。

それぞれメリットデメリットがありますが、慎重に検討しましょう。

まとめ

テナントを探す際のコツと注意点についてまとめてみました。

探し方は不動産業者、インターネット、自分自身の大きく3パターンが考えられます。また、それに付随して注意しておく点もいくつかありました。

検討項目はたくさんありますが、「自分の城」になる大切な物件です。

頑張って探しましょう!