不動産業経営について①損益分岐点

今回は不動産仲介業の経営についてお話します。経営と言っても必要な情報はたくさんありますが、主にお金まわりです。
経営者の役割は数多くありますが、事業が運営しつづけられるようにお金を回すことも大切な仕事です。大企業の場合はCFOというように役割が分かれていることもありますが、中国では社長の事を「代表取締役経理」というそうです。つまり、資金調達・管理は経営者にとって重要やミッションの一つと言ってよいでしょう。
今回は「損益分岐点」についてお話します。
損益分岐点売上高(=BEP)とは?
まず、用語の説明をしておきます。
損益分岐点とは「損」と「益」との「分岐点」つまり赤字と黒字の境目です。いわゆる「トントン」ということです。
損益分岐点売上高とは、その境目の売上高、ここを超えると黒字になるよと言う売上金額です。英語でいうとBreak Even Pointとなりますので、略してBEPともいいます。
BEPを把握しておかなければならない理由は?

BEPを把握しておく必要があるのは、当然BEP以下の売上しかあがらなければ赤字となりその赤字分を解消していかない限り累積となって溜まっていくからです。開業してすぐだからと甘えて1ヶ月目に200万の赤字です、2ヶ月目も200万の赤字です、3ヶ月目も200万です・・・とこの状況が続けばどうでしょう。事業を続けることはできるでしょうか?
初期投資分を加えると不動産開業は実は大きくマイナスからのスタートとなります。従って、一刻も早く累積赤字を解消していく必要があります。累積赤字分を耐えられるだけの運転資金の確保が出来ていなければ早期に倒産となる可能性もあるでしょう。
経営者がBEPを把握しておくことは当然のことですが、ここで大切なことは全スタッフにこの共通認識を持たせることです。
経営者と別に店長として別の方をたてて運営してみると意外と店長がこの損益分岐点売上高=月々の経費累計を把握していないケースもあります。意外としっかり把握しているのは経理処理をしている事務スタッフであったりもします。
損益分岐点売上高とは「最低限稼がなければならない売上」ですので、何が何でもこの数字は死守しなければなりません。この意識が無いまま漠然と営業活動をしても全く数字は上がりません。危機感が無いからです。
赤字が続けば経費を削っていかざるを得ません。スタッフからすると難しい話かもしれませんが、自分たちの待遇にも関わる話です。一致団結して「まずは最低限の損益分岐点売上高をキープしよう」という目標をたてる必要があります。
「未経験だから」「開業当初だから」と甘えている場合ではありません。全力で全員で数字を作りに行きましょう。
キャッシュフローの把握

次はキャッシュフローの把握です。
こちらも難しい概念ですが、理解が必要です。端的に言うと「入りは早く、出は遅く」という考え方で、手元に現金が残るようにコントロールすることです。
売上は売上ですがイコール現金収入とは限りません。売上として計上しているが、未入金のものもあります(売掛金といいます)。不動産仲介営業で言うと、仲介手数料を受領するタイミングは主に2回です。「契約時」と「決済(=引渡し)時」です。
仲介手数料を売買契約と同時に受領するようにしている場合は良いのですが、決済時となっている場合は入金が決済時までの期間(住宅ローン利用時は約1ヶ月半程度が多い)会社に入金が無いことになります。その期間中も固定費の支払いはもちろんしなければなりません。もちろん、お客様の都合で契約時に受領できない場合もあります。しかし、地域の慣習で何となく決済時に全額受領をしている場合も散見されます。契約時に全額受領できない場合も、契約時と決済時で半金づつというケースもあります。「何となく言いづらい」という方もいますが、最初に言っておくだけです。契約が近づいてきてから言い出すので言いづらいのです。初回対応時に説明しておきましょう。
他に先に確保する方法として、実務的に言えば例えばいわゆる手付金から売主分の仲介手数料に充当するという事も考えられます。
買主→売主:手付金100万円
仲介手数料:36万円の場合
手付金100万円を現金で売買契約時に売主が買主から受領した場合は、売主の手元に現金が100万円あるわけです。そこで、同時に100万円の中から36万円を売主の仲介手数料として不動産仲介会社が受領し、残りの64万円を売主には当日お持ち帰りいただく形です。
また、リフォーム等の工事が関わってくる場合も工事期間分受領が遅くなります。(前記事をご参考ください)
売上が上がっているのに手元にお金が残っていない…というのは経営者失格です。
キッチリお金の流れを把握しておくと同時に、スタッフにも「入りは早く、出は遅く」という考え方を徹底しておきましょう。
運転資金の確保

経営者として対応しておくことは「運転資金」の確保です。
「売上の数か月分」という考え方もあれば、「固定費の数か月分」という考え方もあります。この「数カ月」という数値は当然「固定費の数か月分」の方が大きくなります。
一般的に運転資金の調達は設備投資資金の調達より少額になる傾向があります。設備投資資金は「見積金額」という目に見えるものありますが、運転資金はあくまで予測値ですのでお金を出す側からすればリスクが高くなるためです。
従って開業時調達資金の事業計画資金計画についても自己資金が重要となってきます。
この運転資金の確保が出来ておらず、「ケチケチで開業」しても当初は特に認知もありませんので集客ができません。
事業運営していくと思った以上にお金がかかるものです。
計画段階でしっかり把握しておきましょう。
まとめ
経営に関する指標「損益分岐点」について不動産業としての観点から説明しました。
経営者だけが把握しておくのではなく、全スタッフに認識を浸透させておくことが必須です。また、キャッシュフローを早くしておくことも統一見解としておきましょう。
せっかく開業しても倒産しては意味がありません。
「ご利用は計画的に」の精神で運営していきましょう。