不動産開業する際の事務所や店舗立地の考え方とは? ①

不動産業を開業する際に、店舗(事務所)立地は非常に重要です。前回の記事にて「不動産業を自宅事務所で開業する」こと自体は可能だとお伝えしました。しかし、経費節減や時間確保においてメリットはありますが、事務所を店舗として考えた場合必ずしも自宅をそのまま利用することが正解ではありません。そこで、今回は不動産業を開業する際に必要な事務所(店舗)についての考え方についてお伝えいたします。

不動産業を開業する際に理想的な物件とは?

不動産業の中でも色々な業態がありますが、ここでは一般顧客に売買仲介サービスを提供する形態の店舗を想定しています。また標準的な考え方を説明いたしますが、もちろんこの考え方が100%の正解とは限りません。それぞれのエリア・業態・人員構成・開業資金等個別事情によって状況は異なるかと思いますので、あくまで参考意見の一つとして読んでいただければ幸いです。

チェックポイントは以下の通りです。

  • 広さは20坪前後
  • 前面駐車場ありが望ましい
  • 立地はやや郊外(ターゲットによる)
  • ロードサイド型、視認性(誘目性)が高い、前面道路はやや渋滞する

広さについて

売買仲介を中心に展開していく場合、広さとしては店舗面積で20坪前後はあったほうが良いでしょう。

営業人員にもよりますが、4人掛け以上の椅子を設置した接客テーブルを2~3つ(=営業マンの人数分)設置します。又、昨今はプライバシーに配慮してテーブル間にパーテーションを設置する場合も多いかと思います。さらに、契約時の特別感を演出する意味も含め「契約室」として個室を準備している場合もあります。売買の場合はお客様の年収など高プライバシーのヒアリング項目もありますので、お客様に配慮したレイアウトを考慮しましょう。

4人掛け以上という理由は、売買事業の中心となる顧客はファミリー層が多くなるからです。イメージとしては、32歳(夫)・28歳(妻)・4歳(子)・2歳(子)の4人家族が上のお子さんが小学校に上がるまでに物件を購入したいという層が多いです。(※売却希望のお客様の年齢はもう少し上がるイメージです。尚、売主様を中心とした営業スタイルでご自身だけや少人数で運営される場合はやや小規模なスペースでも支障はありません。)

その他、接客スペース以外では事務所スペース・トイレ等が必要となります。

以上を考慮すると20坪前後の面積が望ましいでしょう。

駐車場について

来店時はワンボックスカーにて停めやすい前面駐車場が理想です。

ただし都心型の店舗では駐車場を確保することが難しい場合もあります。その場合は、お客様分の近隣のコインパーキング代を出すことも考えられます。上記のように、中心顧客層はファミリーです。ファミリーが入りやすい店舗が必要です。さらに言うと、特に地方部の場合お客様の分だけではなく従業員の駐車場を確保しておくことは重要です。

近くに空き駐車場が無い場合は、近隣の低層アパートの空駐車場を当たってみてください。交渉になりますが、空室がある場合や入居者が駐車場を利用していない場合などオーナーにとっては「満室率」が下がっている状態ですので、定期利用を申し出ることで受け入れてもらえる可能性はあります。

特に地方部に出店される場合は、駐車場について様々なことを考慮しておきましょう。

立地について

物件が出やすい「やや郊外」の立地を選ぶことが原則的な考え方です。「商品」が無ければ商売になりません。

ただし立地について完全な正解を求めることはほぼ無理です。不動産の場合は小売店のように「モノ」があるわけではなく、購入決定に至るまで長期間、複合的な要因が関わるからです。従って、この場所に出店したから必ず売上があがるという立地はありません。ただし、考え方の根拠として開業後の運営をスムーズにするために最も重要な考え方はマーケティングです。

端的に言うと「出店検討場所付近に物件数が多く、ターゲット顧客がいるか?」という観点が必要です。

候補テナント付近の

物件数は?

世帯数は?(ファミリー層がターゲットですので人口ではなく世帯数基準で考えます)

年齢層は?

交通量は?

■ (分かれば)年収層は?

人気小学校区は?(お子さんが小学生未満の場合が多いため)

.etc など複数の要因を検討して総合的に判断しましょう。自宅で経費を抑えることも大切ですが、そもそもお客様がいなければ商売になりません。

この時に大切なことは「優先順位を決める」ということです。

実際にお客様に物件を紹介する時も同じなのですが、「100%完璧な物件は存在しない」ということを頭に入れておきましょう。仮にあったとしたら、価格や賃料は高くなりますし、情報として水面下で取引を終えていることが大半でしょう。

又、原則論は「やや郊外」になりますが戦略によっては原則から変更することも考えられます。やや郊外で物件が出やすい住宅地付近を優先するという考え方もありますし、人通りが多く単価が高い駅前を優先するという考え方もあります。どちらも正解です。経営者としての判断となります。ただし、「何となく」ではなくデータや情報など根拠をもって決定しましょう(余談ですが、開業資金を融資で調達する場合銀行から説明を求められる場合があります)。

もしそれでも実際に出店して条件が悪ければ移転すればよいことです。条件に固執しすぎず、「100%完璧な物件は存在しない」という前提のもとで自分にとって優先する項目を決めていきましょう。

視認性(誘目性)について

「視認性(誘目性)」とは、「見つけやすいか、見つかりやすいか」という意味です。「視認性」と「誘目性」は厳密にはそれぞれ個別に意味の違いがあるのですが、ここでは「店舗として発見してもらいやすいかどうか?」ということにしておきましょう。「発見してもらいやすいかどうか?」という意味合いで見通しのよいロードサイドが理想です。また、目立つ看板を設置するスペースがあるかどうかも重要です。

ロードサイドであることはポイントの一つですが、中央分離帯がある道路は不向きです。お客様の導線を考えると、反対車線で発見されても来店しづらいからです。

また、交通量は「やや渋滞する道路」や「生活道路」が理想です。渋滞すると通過ではなく停車した時に店舗に目をとめてもらえる可能性が高まります。「やや」と書いたのは主要道路は地元住民以外の方の利用も多いことが想定されるからです。不動産仲介業は地域密着の商売です。購入者の大半は地元の方ですので、地元の方が利用することが多い道路のロードサイドが望ましいです。

せっかく店舗を構えるからには、「看板」効果も狙っていきましょう。

【参考】賃貸店舗について

マーケティングの参考に比較として、賃貸店舗の出店について考えてみましょう。

賃貸のお客様はどのような方が多いでしょうか?

学生?

単身赴任?

独身?

.etc など売買の場合より幅広く様々なお客様がいらっしゃることが想定されます。

どの層をターゲットとするかによって出店場所の考え方も変わってきます。賃貸のケースは駅前出店の例が多いかと思います。ただし、結果的に駅前出店になること自体は良いかと思いますが「賃貸だからとりあえず駅前」という考え方では、競合がひしめく中、競争に巻き込まれるだけです。しっかりと「どのようなお客様に来ていただきたいか?」という店舗コンセプトを明確にした上で優先順位を決めていきましょう。

以上を踏まえますと、来店されるお客様は一般的には1~2名が想定されるのでカウンタータイプの接客テーブルやインターネット中心で展開で経費を抑えたいならより狭小で空中店舗も考えられるでしょう。

尚、売買店舗であっても賃貸店舗であっても1階で店舗そのものが「サービスメニュー」として「分かりやすい」「入りやすい」ということは重要です。

その上で、予算や条件などを考慮して総合的に判断していきましょう。

まとめ

出店戦略に正解はありません。予算や条件によっても変わってくるでしょう。

ただし、最も大切なことは「お客様目線=マーケティング」の発想を持つことです。お客様に来ていただきやすい店舗を目指して物件を選定していきましょう。