不動産開業の業務準備⑥(サービスメニュー)

今回は不動産開業準備の最終回として「サービスメニューの拡充」についてお話します。

不動産仲介業は「仲介業務」がメイン業務なのはもちろんなのですが、その他「副業」的に付随サービスを提案することができます。言い換えると、不動産仲介業にて単価アップする方法と言い換えてもいいでしょう。

今回は、付帯サービスについてご説明します。

リフォーム

まずは、リフォームを提案することができます。不動産仲介はもちろん新築も提案しますが、中古住宅を提案することが多くなります。その場合、中古住宅ですので経年劣化や損耗があることが大半です。従って、物件が取引される場合は同時にリフォーム工事が絡んでくることが多くなります。

 購入客の場合

 不動産購入をする場合に買主様にリフォーム工事を提案して、一緒に受注します。金融機関によって変わる場合もありますが、現在は住宅ローンと一体化して物件購入時の住宅ローンに組み込むことが出来る場合が多いです。

 以前は物件を購入する場合に「住宅ローン」と「リフォームローン」は別商品であり、それぞれ借入可能期間や金利が異なっている場合が多くありました。その場合リフォームローンの金利は一般的に住宅ローンよりも高金利で、借入可能期間も短くなります。言い換えると、月々支払い金額が高くなります。物件購入時(住宅ローンを組む時)と同時でなく単独でリフォームローンを組む場合はもちろん、リフォームローンの貸し出し条件が適用されます。

 

 ですので、「住宅ローン」と「リフォームローン」が金融機関において「一本」で対応できる場合は、中古住宅+リフォームの提案はお客様にとってもメリットがあります。

 自社でリフォーム工事をやっていない場合はどうしたらよいのか?という声もありそうですが、リフォーム業者さんに紹介して紹介料をもらえば良いです。

 売却客の場合

 売却顧客の場合ももちろんリフォームを提案できます。

 大きく「リフォームをしてから販売活動する場合」と「リフォームプランを作って販売活動し、引渡しまでにリフォームを施工して引渡し」という2つのパターンがあります。

 前者のパターンはもし売れ無かった場合のリスクが大きいというデメリットがありますが、買主様から見れば施工後のイメージがもてるので物件を理解しやすい、あるいは引渡しまで短期間で済むなどのメリットがあります。

 後者のパターンは「仮にリフォームをしたらこのようになります」という価格とイメージを作成しておいて、契約後工事に入ります。売主様にとっては売却契約が決まってからの工事作業依頼(施工)になるので、契約がまとまるまでにリフォーム代金を手出しすることはありません。

 最近はVRや家具をデジタル上で消したり足したり(ホームステージング)など「不動産テック」も発達してきていますので、買主様もイメージしやすいでしょう。

 

建築紹介

 こちらも紹介料ビジネスです。

 土地を提案する際に、土地だけではなかなか買主様も建築後のイメージがつきません。

 そこで、土地を提案する際に建築会社に同席してもらい、建築は建築会社で受注してもらい受注金額の内数パーセントを紹介料としてもらう形です。

 かなり実務的な内容になりますが、住宅ローンは土地だけで貸してくれる金融機関はレアケースです。つまり、建物と土地が一体化(する前提)でないと住宅ローンが使えません。

 そこで、土地を契約いただくためにもそもそも建物のことが決まっていないと前に進まないのです。ですので、必然的に土地と建物をセットで提案していくことになるのです。

 地元工務店やハウスメーカーと紹介関係が出来ると、工務店側から建物はその工務店で建てることは決まっているけれど、土地が決まっていない顧客の紹介を受ける場合もあります。

 お互いに相互補完関係で良好な関係を築いておくと、後々集客も楽になるでしょう。

紹介料ビジネスの注意点 

ここまで、それぞれ紹介料ビジネスを見てきましたが注意点があります。経営的な観点から言うと「キャッシュフローは遅くなる」ということです。

 当然ながら工事はある程度時間が掛かる場合が多くなります。その期間は引き渡しが遅くなります。そして、この紹介料が紹介先の会社から入ってくるのは引き渡し時になります。つまり、工事期間分引き渡しが後ろにずれるので、その分自社への入金が遅くなります。これは仲介手数料についても同じです。仲介手数料は「契約時」「契約時と引き渡しに半金づつ」「引き渡し時」という3つのパターンがありますが、ここで「引き渡し時」にしていると紹介料だけでなく仲介手数料の入金も遅くなってしまいます。

 この間「売掛金」となるわけですので、未収リスクや黒字化の遅れも想定されます。仲介手数料は可能ならば契約時に全額受領するようにしましょう。

火災保険

 火災保険も代表的な不動産仲介業の副業です。

 火災保険代理店となることで、保険会社から手数料収入を得ることができます。ただし、近年は災害リスクが高まっており火災保険の契約期間の上限が短くなってきています=金額が少なくなります。以前ほどの旨味は無くなってきていますが、こちらも住宅ローンを組むと必然的に発生する業務です。取りこぼし無く、受注しましょう。

融資代行手数料

 住宅ローンを提案する際に、自社を通じて融資を申請してもらい手続き代行の手数料を頂くものです。

買取

不動産を自社で買取るサービスです。

 簡単に言うと不動産版の物販事業です。再販売を前提として物件を買い取って、その後「商品化」して販売をしていきます。

 仲介業は手数料ビジネスので材料仕入れ等原価は発生しませんが、こちらは「販売用商品の仕入れ活動」になりますので商品原価として資金が必要となります。当然、在庫リスクも抱えることになりますので仲介をある程度経験して相場を理解した上で対応されることをオススメします。(物件購入資金の融資条件も開業後1年以上の場合が多いです)

 尚、こちらも紹介料ビジネスにすることも可能です。不動産買取をしている会社(例:不動産開発会社、自社売主販売業者)に物件自体は買い取ってもらい、自社がその仲介に入る形です。

 この場合は紹介料という名称ではなく、一般的な「仲介手数料」となる場合が多いです。

リースバック

 買取サービスの一種です。近年広まってきたサービスです。

 不動産買取会社が物件を買取りますが、同じ顧客(=売主)に賃貸物件として貸し出します。つまり、売買契約と賃貸契約を同時に行います。

 それによって、売主は不動産物件を売却するような資金用途があったとしても引っ越さずにまとまった資金調達をすることも可能です。

まとめ

不動産仲介業には様々な「副業メニュー」もあります。

業務の流れを理解して、提案の機会を逃さず単価アップしていきましょう。