不動産開業の業務準備②マーケティング(市場確認/物件確認)

不動産開業のマーケティング2回目です。前記事は「不動産開業の流れ 業務準備①マーケティング(ペルソナ/カスタマージャーニー)」ですので、先にこちらをご覧になってから当記事を読んでいただいた方がより効果的かと思います。

今回は3C分析の続きです。

3C分析のcustomerですが、ここは顧客という意味合いだけでなく市場調査というカテゴリも含まれます。

前回設定したペルソナの顧客層がそもそも市場に居なければそこで戦ったとしても勝機はありません。そこで、今回は簡単な不動産開業時の市場調査についてお伝えします。

市場規模の確認

まずは、自社エリアの市場規模を確認しておきましょう。

世帯数

こういった市場調査をする場合「人口動態」を基準にする場合も多いかと思いますが、不動産売買仲介の場合顧客層がある程度絞られています。購入顧客の場合は30代前後の方が多く、売却顧客の方はそれより少し年齢が上がる印象です。

購入顧客の場合は特に「家族のため、子供のため」にマイホームを買う方が多いですので、基本的には世帯数を基準に調べます。

従って商圏は「何世帯の商圏」という設定となります。一世帯当たりの人数が2.5人かと思いますので、概算で人口の約3分の1程度の数値が世帯数というイメージかと思います。

また、こういった世帯数等のデータは市役所等のホームページでデータ化されている場合が多いですので、そこからデータを参照してみましょう。

年齢層

購入顧客の場合は前述の通り、30代の方が多くなると思います。しかし、売却をされる場合は相続等の売却理由もありますので、それより年齢層が高くなるイメージです。不動産売買仲介においてその中でも購入顧客中心で展開していくか、売却顧客中心に展開していくかで少し対策が異なります。

また、例えば売却顧客を中心に展開していく場合40代が多く居住するエリアを中心に展開していけば良いのでしょうか?

必ずしもそうではありません。先ほど売却顧客の動機として相続に言及しましたが、相続の場合例えば地方から東京など都市圏に出て働いており、実家は空き家であるというパターンも考えられます。そうすると40代の人が多い居住地域がターゲットとは限りません。

何が言いたいかというと、「想像力を働かせましょう」ということです。

そこでとても重要になってくるのが前回お話した「ペルソナ」と「カスタマージャーニー」となります。売却顧客中心で展開する場合地元顧客ももちろんですが、地元出身者で現在は他府県に居住する方を集客したいと考えるのであれば、発信する媒体も変わってくるでしょう。

市場調査や年齢層という事について言えば、ペルソナがたくさんいそうな媒体を調べることになります。ちなみに、シニア層が一番利用しているSNSはLINEです。

小学校区

次に商圏の区分単位です。購入顧客を中心に展開する場合は、行政区の区分だけでなく小学校区単位の区分も確認します。どの地域がどの小学校区に属するかも地方公共団体のホームページで掲載されていることが多いですのでこちらで確認しましょう。

小学校区単位で考える理由は、ペルソナで想定される顧客が前述の通り30代の方でご家族のために購入されたい場合が多いからです。いわゆる「人気小学校」が購入物件のエリア選定に関わってくる要素になります。

物件数

地域に流通している物件数を確認しておきましょう。それがあなたが提供できる商品数です。

確認方法はポータルサイトであるSUUMOやathomeなどで検索すれば良いかと思います。
ただし、注意しておくことはポータルサイトに掲載されている物件は流通している物件の全てではないということです。販売されている物件の中には売主様のご意向で秘密に売却したい場合も存在します(例えば、売却理由が離婚 等)。また本当は良くないのですが業者の都合で広告掲載をしていない場合もあります。「囲い込み」ということが関わってくるのですが、ここでは物件数の確認というトピックですので、説明は割愛します。興味のある方はネット検索してみてください。

ポータルサイトから物件数を確認してその数が少なかったとしても、あきらめないでください。不動産には広告承諾という慣習があります。売主側の承諾がなければ広告の掲載ができないということです。ですので、広告承諾は得られないが実際は販売している物件もあります。

また宅建業免許が下りる前にはこういったネット媒体を利用するしかないのですが、宅建業免許がおりると「レインズ」という不動産業者の専門サイトが利用できます。現在では一部機能を売主様が利用することもできますが、原則は業者専用のサイトです。広告承諾を得られなくても取り扱いが可能な物件も掲載されています。

ここまでの話で何となくご理解いただけるかもしれませんが、実は不動産業界は情報が整備されておらず統一完全のデータベースが存在していません。公的な存在のレインズがそれにあたるべき存在ですが、実際は全ての物件が掲載されているわけではなく地域によって実情が異なります。また、賃貸物件はその偏りは顕著で首都圏近郊は機能しているのですが、それ以外の地域ではあまり機能しているとは言えません。

このあたりは業界全体の課題でこれから先改善されていくべき話ですが、現状では整っていないので実情に合わせて推定していくしかありません。

相場

物件数の確認と同時に、ポータルサイトに掲載されている物件の相場を把握しておきましょう。

相場の把握はとても大切です。不動産の価格は需要と共有のバランスで決まります。エリアごとにどれぐらいの価格で販売されているか把握しておきましょう。また、物件種別(新築戸建、中古戸建、中古マンション、土地)別にそれぞれの相場も把握しておきましょう。

物件を購入される方は、住宅ローンを組まれる方が大半です。つまり、借りられる金額に限りがあります。借りられる金額以上に物件金額が高ければ購入することができません。地域によって相場がありますので、それによって購入可能なエリアも限られてきます。

売却を中心に展開していかれる場合も、相場の把握はとても重要です。一般的に購入顧客は「なるべくじっくり、安くで買いたい」のに対し、売却顧客は「なるべく早く、高くで売りたい」ものです。そのそれぞれ矛盾する要望の調整をしていくことが不動産仲介営業マンの仕事です。

売却を提案する場合、最初に「売却査定」を行います。当然、売却する側は高額査定を希望するのですが実際相場からかけ離れた値段設定をしても実際に買う人がいないわけですので、マッチングが成立しません。

従って、売却を提案する際に「相場」を売主様に理解いただき相場付近の金額で販売を提案する必要があります。価格比較サイトなどのwebサービスが他業界でもたくさんありますが、それは買う側の「安くで買いたい」「割高になりたくない」という心理を反映したものです。

相場からかけ離れた金額で販売開始しても、とても時間がかかったり結局値引きしないと売れない場合が多いですのでそれは売主様にとってもデメリットです。

相場を把握して、適正な提案を出来るようにしておきましょう。

まとめ

不動産業に関わらず市場動向を把握しておくことは大切です。

一般的な市場調査に加えて不動産の裏側も知っておくことで、適切な判断ができるようになります。

参考になれば幸いです。