不動産開業は賃貸・売買どちらから?

今回は「不動産開業は賃貸・売買どちらから」についてお話します。

不動産業には様々な種類があります。「不動産流通業」で言うと「賃貸」と「売買」のカテゴリーに大別されます。また、「賃貸」の分野で言うと大きく「賃貸管理」と「賃貸仲介」に分かれ、「売買」の分野で言うと「売買仲介」と「買取再販」に分かれます。当然、それぞれ完全に分離しているわけではなく賃貸仲介と売買仲介をやっている会社は多数ありますし、売買仲介と買取再販を同時にやっている会社も数多く存在します。

今回は以上4つのカテゴリーについて概略を説明した上で、開業する際にどちらから始めるのか?について見解をお伝えしたいと思います。

賃貸分野

賃貸仲介

ではまず「賃貸仲介」について説明しますが、その前に「仲介」という用語について説明しておきます。

「仲介」は別名「媒介(ばいかい)」とも呼ばれます。意味はほぼ同じなのですが結婚で言うと「仲人(媒酌人)」のようなものです。最近は「仲人」をたてる場合も少ないので、そもそもその説明自体が古いのかもしれませんが要は「間に立って」ものごとを調整する役割です。

不動産の場合、「借主」と「貸主」あるいは「売主」と「買主」の間に立ってその調整をする役割をする不動産業者の事を「仲介業者」あるいは「媒介業者」といい、「借主」や「貸主」などの契約当事者と「仲介(媒介)契約」を締結し、任務を果たすことで「仲介手数料」を契約当事者から受領し、それが売上となります。

仲介のイメージ図(売買取引の場合の例)

また仲介営業マンを最近は「エージェント」という呼称も少し広まってきているかもしれません。

エージェントとは「代理人」とも言われますが、プロスポーツ選手の契約に登場する場合が多いでしょう。この不動産版です。

賃貸仲介となれば、「借主」の立場に立って物件を探して提案し、「貸主=オーナー」側と入居にあたって条件を整理して無事入居してもらうまでが仕事の流れとなります。

賃貸管理

一方オーナー(貸主)側の立場にたつのが「賃貸管理」業者となります。オーナー側の仲介業者とも捉えられますが実際は管理業務の中に「空室募集=リーシング」があり、イメージ的には仲介業務は管理業務の中に含まれている場合が多くあります。

管理業務は多岐にわたりますが、「入居者管理」「施設管理」「空室募集」「オーナー対応(報告)」などがあります。また、最近はオーナーの「資産管理アドバイザー」としての側面を求められる場合もありますので幅広い知識が必要とされます。そのニーズに対応するため「賃貸不動産経営管理士」という資格制度が創設され、2021年に国家資格となりました。

実は以前は「賃貸管理」に関して事実上「無法状態」でした。

類似する法律としては「宅建業法」がありますが、こちらは正式名称は「宅地建物取引業法」といいます。つまり、「取引」を適正化(規制)する法律です。言い換えると、「仲介」業務に対する法律とも言えるので、「管理」は対象外です。

今回の国家資格化に関する主な改正点が賃貸管理業者の届出制度です。改正により、今後賃貸管理業を営む場合は資格が原則必要となってきます。それにより不動産賃貸管理業者の活動を法的に適正化していきます。

売買分野

売買仲介

では続いて「売買」分野についてみていきましょう。

「売買仲介」はその名前の通り不動産物件の売買取引を仲介する役割です。

「買主」と「売主」との間にたってその調整をして、物件の引渡しまでをスムーズに行うことが役割となります。上記の「エージェント」というのは売買の場合に用いられることが多いかもしれません。さらに「セラーズ(売主側)エージェント」「バイヤーズ(買主側)エージェント」と分かれることもあります。アメリカでは「セラーズエージェント」と「バイヤーズエージェント」が分かれることが一般的ですが、日本では一つの会社・一人の営業マンが兼ねる場合も多くあります。その場合の取引を「両手」あるいは「両直」と言ったりします。(どちらか片方側の仲介であれば「片手」と言います)

買取再販

買取再販は不動産売買の取引の売却側の立場となりますが、この場合売主の代理人・仲介ではなく不動産業者自身が「売主」となります。そして販売用の物件を仕入れるために「買取」をすることになります。リサイクルショップをイメージしていただければ分かりやすいかと思います。業務の流れ自体はリサイクルショップと同じで商材が不動産物件となるだけです。

開業する際はどちらから始めるのか?

ここからはタイトルの見解となりますが、当然ながら「個人の見解」となります。どの形態から事業開始したとしてもメリットデメリット(リスク)は生じますので、情報を取捨選択した上で各自でご判断下さい

開業時に取り組みがしやすいのは仲介業務です。買取再販は経験者は問題ないでしょうが、在庫をかかえることになるため未経験では在庫リスクを大きく抱えることになるでしょう

仲介業務のメリットは言い換えると「在庫が無い」ということです。つまり、「仕入原価」がゼロですので店舗運営に際して「販管費」や「店舗経費(家賃など)」などだけで事業運営ができます。

また賃貸と売買のどちらからということであれば取り組みがしやすいのは「賃貸」となります。

ただし、当然仲介手数料の単価は売買取引に比べて少なくなりますので件数をこなす必要があります。また、最近はインターネットの発達によって顧客対応の人的要因が減ってきており仲介手数料の値段交渉なども発生しています。顧客層も例えば売買取引においての買主が30代の子育て世代が多いことに比べて幅広くなりより柔軟な対応が必要となります。それにより、実践力が身につくことは大いにメリットかと思います。

売買仲介専門業者として事業開始することも良いかと思います。賃貸物件に対して当然ながら取引金額が大きくなりますのでより専門性(例えば、住宅ローン)も求められます。その分1件の契約で数十万円の仲介手数料(=売上)になりますので、売上単価は高くなります。

個人的には「売買仲介、特に売却側の仲介」をベースに「購入客、賃貸も案件があれば対応」という形からのスタートが良いかと思います

賃貸仲介は金額は小さいですが「日銭」を稼ぐことはとても大切です。損益分岐点売上高を超えない限り赤字はどんどん膨れ上がってきます。宅建業免許において「賃貸仲介しかやったらダメ、売買仲介だけではダメ」という規定はありません。一つの免許でどちらも対応できます。イメージ戦略でブランドを分けている場合もありますが、一つの店舗で両方対応することは可能です。

なお、未経験からの開業に不安がある・サポートが欲しい・ブランドが欲しいという場合は不動産フランチャイズに加盟することも手段の一つです。多くのフランチャイズ本部では「看板代」の他に研修制度が充実していることが大半です。もちろん、その分費用発生はしますが未経験から開業する場合は検討してみても良いでしょう。

まとめ

不動産業には「賃貸」「売買」というカテゴリーという分け方だけではなく、「仲介」「管理」「買取再販」という分類の考え方もあります。

それぞれにどの事業から始めるかは、ご自身の経験やメリットデメリットもあります。完全に一人で立ち上げるのに不安な方は、フランチャイズへの加盟を検討することも考えましょう。